3Dプリンターを買おうと調べ始めると、最初に迷うのが「FDMと光造形、どっちを選べばいいの?」という問題です。
僕自身、これまでFDM方式の3Dプリンターを5種類、光造形方式を2種類使ってきました。
結論から言うと、どちらが優れているかは作りたいものによって変わります。
ただ、「とりあえず3Dプリンターを使ってみたい」「まだ何を作るか決まっていないけど、いろいろ作ってみたい」という人に僕が勧めるなら、FDMです。
実際、僕もケースやカバー、ロボットの外装、ヘッドホンハンガーなどの日用品まで、特別な理由がない限りFDMを使ってきました。
一方で、フィギュアのような細かなディテールや、滑らかな表面を求めるなら光造形には大きなメリットがあります。写ルンですのレンズを流用して自作レンズを作ったときも、レンズをはめ込む部分の細かな形状を造形するために光造形を使いました。
FDMと光造形は、単純に「どちらの性能が高いか」で選ぶものではありません。
この記事では、実際に両方を使ってきた経験をもとに、造形精度だけでは分からない「使いやすさ」「後片付け」「ランニングコスト」「作れるものの違い」まで含めて比較していきます。
先に結論|迷っているならFDMがおすすめ
作りたいものがはっきり決まっているなら、それに合わせて選ぶのが一番です。
特にフィギュアやアクセサリーなど、細かなディテールや表面の綺麗さを重視するなら、光造形を選ぶ価値があります。
仕上がりの差はかなり大きく、僕の感覚では「4K映像とドット絵」くらい違います。
ただし、用途がまだ決まっていない人や、ケース・カバー・日用品などいろいろなものを作りたい人にはFDMをおすすめします。
理由はシンプルで、FDMの方が圧倒的に扱いやすいからです。
フィラメントをセットすれば造形でき、終わったら造形物をプラットフォームから外せば基本的には終了です。
光造形も造形を始めるところまでは難しくありません。しかし、造形後には洗浄や二次硬化が必要です。レジンの管理や洗浄用品の準備も必要で、本体以外に必要な道具や作業スペースも増えます。
僕自身、もし今3Dプリンターを1台も持っていない状態から買い直すとしてもFDMを選びます。
自分がフィギュアのような作品を作ることが少ないことに加えて、管理や取り扱いが圧倒的に楽だからです。
「細かなディテールを最優先するなら光造形。それ以外で迷っているなら、まずFDM」
これが、両方を使ってきた僕の現時点での結論です。
FDMと光造形の違いをざっくり比較
僕が実際に両方を使って感じた違いをざっくりまとめると、こんな感じです。
| 比較項目 | FDM | 光造形 |
|---|---|---|
| 扱いやすさ | ◎ | △ |
| ディテールの再現 | △〜○ | ◎ |
| 表面の綺麗さ | △〜○ | ◎ |
| 日用品・ケース | ◎ | △ |
| 衝撃を受ける部品 | ◎ | △ |
| 小物の大量造形 | △ | ◎ |
| 材料の選択肢 | ◎ | ○ |
| 後処理 | ◎ | △ |
| ランニングコスト | ◎ | △ |
| 必要な作業スペース | ○ | △ |
もちろん、最近の機種や使用する材料によって差はあります。
ただ、実際に使った感覚としては、**FDMは「幅広いものを気軽に作れる方式」、光造形は「綺麗さや細かさに特化した方式」**という印象が一番近いです。
FDMを使って感じたメリット
とにかく管理・取り扱いが楽
僕がFDMをよく使っていた一番大きな理由は、管理が楽だからです。
基本的にはフィラメントをセットして造形を開始。造形が終わったらプラットフォームから外せば、それで一連の作業はほぼ終わります。
光造形も造形を開始するまでなら、それほど大変ではありません。
ただ、造形後には洗浄や二次硬化が必要です。
僕が光造形を使っていたときはIPA(イソプロピルアルコール)を使って洗浄していましたが、においが強く、引火性もあるため取り扱いには気を使いました。
途中から水洗いレジンも使いました。IPAを使わなくて済むのはかなり楽でしたが、それでもレジン特有のにおいやベタつきはあります。
造形そのものは楽しいのですが、毎回の管理や後片付けまで含めると、FDMの方が圧倒的に気軽でした。
ケースや日用品なら大抵のものを作れる
FDMではこれまで、ロボットの外装やカバー、ヘッドホンハンガーなど、さまざまなものを作ってきました。
特に細かなディテールが必要でなければ、基本的にはFDMを選ぶことが多かったです。
ケースやカバーなどの実用品とも相性がよく、多少衝撃を受ける部品でも使いやすいと感じています。
自分が「とりあえず1台買うならFDM」と考える大きな理由もここです。
何を作るかまだ決まっていなくても、日用品レベルならかなり幅広く使えます。
衝撃を受ける部品にも使いやすかった
自分が使ったレジンでは、光造形品は硬くカチッとした仕上がりになる一方、ネジを締めたり衝撃が加わったりしたときに割れることがありました。
一方、FDMでは適度にしなる材料を使えるため、ロボットの外装のように繰り返し衝撃を受ける部品では使いやすかったです。
もちろん材料によって性質は大きく変わりますが、実用品や機械部品を作るときは、この違いをかなり感じました。
造形後の追加工がしやすい
FDMは造形した後に手を加えやすいのも気に入っているところです。
例えば、造形した穴にタップを立てて直接ネジを切ったり、熱を使ってインサートナットを入れたりできます。
複数の部品をネジで組み立てるものを作ることが多かった自分にとって、この加工のしやすさはかなり重要でした。
材料を選ぶのも楽しい
FDMはフィラメントの種類が豊富なのも魅力です。
普通の材料だけでなく、光を蓄えて暗いところで光る蓄光フィラメントを使ったこともあります。
TPUも種類によって柔らかさが違い、「この部品ならこの材料」と用途に合わせて選べるのが面白いところでした。
コストを抑えやすい
コスト面でも、僕はFDMの方が使いやすいと感じています。
材料自体が比較的安いことに加えて、内部の充填率を変更できるので、強度がそれほど必要ない部品なら材料の使用量を抑えられます。
さらに光造形では、レジン以外にも洗浄用品や消耗品が必要です。
本体価格だけを見るのではなく、実際に使い続けるために必要なお金まで考えると、この差は結構大きいと感じました。
光造形を使って感じたメリット
ここまでFDMのメリットを多く挙げましたが、光造形にも明確な強みがあります。
むしろ、用途によっては「光造形じゃないと厳しい」と感じることもあります。
ディテールの再現性は圧倒的
一番大きな違いは、やはり造形物の細かさです。
FDMでも綺麗な造形はできますが、細かな凹凸や小さな形状まで表現しようとすると限界があります。
光造形で出力したものと比べると、その差はかなり大きいです。
感覚的に表現するなら、4K映像とドット絵くらい違うと感じました。
もちろんこれは少し極端な例えですが、「完成したものを見た瞬間に違いが分かる」という意味では、それくらい印象が違います。
フィギュアの顔や服のシワ、小さな装飾など、細かなディテールを作品として見せたいなら光造形はかなり強いです。
表面が綺麗
FDMではどうしても積層痕が見えます。
造形条件や最近の機種によってかなり綺麗にはできますが、「そのまま飾れる見た目」を求めると、光造形の方が有利だと感じます。
フィギュアやアクセサリーのように、造形物そのものの見た目が重要なものでは、この差は大きいです。
細かな寸法を再現したいときにも使いやすかった
僕自身、写ルンですのレンズを流用して自作レンズを作ったことがあります。
そのときに重要だったのが、レンズをはめ込む部分です。
小さなレンズを保持するため、細かな形状をきちんと造形する必要がありました。
こういった用途では、光造形の精度とディテール再現性が活きました。
最近のFDM機なら同じものを作れる可能性はありますが、少なくとも自分が製作した当時は、光造形を選んで良かったと感じています。
小さな部品をまとめて作るのが得意
光造形を使っていて面白かったのが、小物を複数作るときです。
FDMでは基本的に造形する量が増えれば、そのぶん造形時間も増えていきます。
一方、LCD方式の光造形は1層を面でまとめて硬化させるため、同じくらいの高さの小物をプラットフォーム上に複数並べても、造形時間への影響が比較的小さいです。
同じ小さなパーツをまとめて作る用途では、光造形がかなり強いと感じました。
光造形を買う前に知っておきたいこと
光造形を使っていて思うのは、本体のスペックだけを見て買うと、想像以上に大変に感じる可能性があるということです。
特に初めて3Dプリンターを買う人には、造形精度より先に知っておいてほしいことがあります。
本体以外にも作業スペースが必要
光造形プリンターは、本体が置ければ終わりではありません。
造形後にレジンを洗浄する場所が必要ですし、その後に二次硬化する場所も必要です。
僕が使っていたときも、
- 3Dプリンター本体
- 洗浄するスペース
- IPAなどの洗浄液
- キムワイプなどの拭き取り用品
- 手袋
- 二次硬化用の設備
と、周辺に必要なものがどんどん増えていきました。
さらに、レジンや洗浄液のにおいもあるので、換気しやすい場所に設置したくなります。
本体サイズだけを見て、
「この机なら置けそう」
と判断すると、あとから意外とスペースを取ることに気づくかもしれません。
後片付けはFDMより明らかに多い
FDMなら、造形が終わったらプラットフォームから剥がして終了、ということも珍しくありません。
光造形の場合はそうはいきません。
造形品の表面には未硬化のレジンが残っているので、洗浄して、乾燥させて、必要に応じて二次硬化します。
僕自身、この作業そのものが嫌いだったわけではありません。
むしろ工作としては楽しかったです。
ただ、毎回やる作業として考えると工程は確実に多いです。
「完成したものだけ欲しい」「なるべく手軽に3Dプリンターを使いたい」という人だと、だんだん面倒になってしまう可能性があります。
逆に、造形後の処理まで含めて工作として楽しめる人なら、それほど苦にならないと思います。
IPAを使った洗浄は意外とハードルが高かった
僕が使い始めた頃は、造形物の洗浄にIPAを使っていました。
このIPAの取り扱いが、個人的には初心者に光造形を勧めにくい理由のひとつです。
においが強いうえ、引火性があるため、保管や取り扱いにも気を使います。
途中から水洗いレジンを使うようになり、ここはかなり楽になりました。
それでも、未硬化レジンを扱う以上、ベタつきやにおいまで完全になくなるわけではありません。
「3Dプリンターを買って、データを送れば終わり」と思っていると、光造形は少しイメージと違うかもしれません。
造形に失敗したあとの復旧もひと手間ある
個人的にFDMとの差をかなり感じたのが、造形に失敗したときです。
FDMなら、失敗した造形物をプラットフォームから剥がして、原因を直してもう一度プリントすれば済むことが多いです。
光造形では、失敗した造形物の一部がレジンタンク内に残っている可能性があります。
僕が使っていたときは、一度レジンをストレーナーで濾して、硬化した破片などが残っていないことを確認してから再び造形していました。
残った硬化物をそのままにしておくのは怖く、次の造形を始める前に確認する必要がありました。
最近の光造形プリンターには、タンク内のレジンを一層まとめて硬化させ、残留物を除去しやすくする「VAT Cleaning」のような機能を搭載したモデルもあります。
このあたりは昔より便利になっていますが、失敗したらすぐ再スタートできるFDMの気軽さは大きなメリットだと感じます。
ランニングコストは材料代だけではない
初心者が意外と見落としやすいと思うのが、ランニングコストです。
比較するときは、
「フィラメント1kgはいくら」
「レジン1kgはいくら」
と材料価格だけを見がちです。
でも光造形では、レジン以外にも洗浄液や拭き取り用品、手袋などの消耗品を使います。
さらに二次硬化装置や洗浄機を買うのであれば、その費用もかかります。
そして個人的には、占有スペースも一種のコストだと思っています。
プリンター本体だけでなく、洗浄・二次硬化・道具の保管場所まで確保する必要があります。
特に自宅で使うなら、この差は意外と大きいです。
光造形は面倒。でも、それでも選ぶ理由がある
ここまで読むと「じゃあ光造形はいらないのでは?」と思うかもしれません。
そうではありません。
僕自身、普段使いならFDMを選びます。
それでも、フィギュアやアクセサリー、細かな形状を持つ部品など、ディテールが作品の価値に直結するものなら光造形を選びます。
管理や後処理の手間を考えても、それを上回るくらい仕上がりに差が出るからです。
光造形はFDMより面倒だからダメなのではなく、
「その手間をかけてでも、この綺麗さが欲しいか?」
で選ぶものだと思っています。
作りたいもの別|FDMと光造形どっちがおすすめ?
ここまでの違いを踏まえて、作りたいものごとに選ぶなら、僕はだいたい次のように考えます。
| 作りたいもの | おすすめ |
|---|---|
| ケース・筐体 | FDM |
| 日用品 | FDM |
| ロボットの外装 | FDM |
| 衝撃を受けるカバー | FDM |
| 治具・試作品 | FDM |
| 大きめの造形物 | FDM |
| TPUを使った柔らかい部品 | FDM |
| フィギュア | 光造形 |
| アクセサリー | 光造形 |
| ミニチュア | 光造形 |
| 表面を綺麗に仕上げたいもの | 光造形 |
| 細かな模様・ディテールが重要な部品 | 光造形 |
| 小さな同一部品をまとめて作る | 光造形 |
もちろん、これは絶対ではありません。
最近のFDMプリンターは造形品質がかなり上がっていますし、光造形にも強度や靭性を意識したレジンがあります。
そのため、「これは絶対にFDM」「これは絶対に光造形」と完全に線引きできるものではありません。
ただ、初めて購入するときの判断基準としては、作りたいものが実用品寄りなのか、見た目やディテール重視なのかで考えると分かりやすいと思います。
FDMがおすすめなのはこんな人
僕なら、次のような人にはFDMをおすすめします。
- 初めて3Dプリンターを買う
- まだ何を作りたいか決まっていない
- とりあえずいろいろ作ってみたい
- ケースやカバーを作りたい
- 日用品を作りたい
- ロボットや機械部品の試作をしたい
- ネジやインサートナットを使って組み立てたい
- 強度や靭性が必要なものを作りたい
- 後片付けをできるだけ簡単にしたい
- ランニングコストを抑えたい
- 自宅で気軽に使いたい
特に、「3Dプリンターって面白そうだから、とりあえず買ってみたい」くらいの人にはFDMの方が向いていると思います。
何を作るか決まっていなくても、身の回りを見ればケース、フック、スタンド、ホルダーなど作れるものはいくらでもあります。
用途を選びにくいという意味では、FDMの方が最初の一台として使いやすいです。
光造形がおすすめなのはこんな人
一方で、次のような人なら最初から光造形を選んでもいいと思います。
- フィギュアを作りたい
- ミニチュアを作りたい
- アクセサリーを作りたい
- 細かな模様まで再現したい
- 表面の綺麗さを重視したい
- 小さなパーツをまとめて造形したい
- 洗浄や二次硬化を含めて工作として楽しめる
- 造形用とは別に洗浄・硬化スペースを確保できる
特に、フィギュアなどディテールが重要なものを作りたいなら、最初から光造形を選んだ方が後悔しにくいと思います。
FDMを買ったあとで「思っていたより細かいところが出ない」と感じて光造形を買い直すくらいなら、用途がはっきりしている人は最初から光造形を選んだ方がいいです。
FDMを買って後悔しやすい人
FDMを買って後悔しやすいのは、造形物のディテールや表面品質を最優先する人だと思います。
例えば、
「フィギュアの顔を綺麗に出したい」
「小さな装飾までしっかり再現したい」
「積層痕が目立つのは嫌」
という人です。
もちろんFDMでも設定や後加工によって綺麗にはできます。
ただ、「最初から細かな造形を目的にしている」のであれば、わざわざFDMを選ぶ必要はあまりないと思います。
光造形を買って後悔しやすい人
逆に光造形で後悔しやすいのは、手軽さを求めている人です。
造形自体は難しくありません。
問題はその前後です。
レジンを管理して、造形後に洗浄して、二次硬化して、使用した道具を片付ける。
失敗したらタンク内の状態も確認する。
さらに洗浄・二次硬化のためのスペースも必要です。
工作が好きなら、この工程も含めて楽しめます。
僕自身、やっているときは楽しかったです。
ただ、「プリントボタンを押して、完成したものだけ欲しい」という人には面倒に感じると思います。
また、ケースやカバーなど、強度や靭性が必要な日用品を中心に作りたい人にも、まずはFDMをおすすめします。
迷ったら「何を作るか」と「どこまで手間をかけられるか」で考える
FDMと光造形で迷ったときは、難しいスペック表を見る前に、次の2つを考えてみると選びやすくなります。
何を作りたいのか。
そして、
3Dプリンターにどこまで手間をかけられるのか。
フィギュアやアクセサリーなど、細かな造形をしたい目的がはっきりしているなら光造形。
ケースや日用品、試作品など幅広く作りたいならFDM。
そして、まだ作りたいもの自体が決まっていないなら、僕はFDMをおすすめします。
3Dプリンターは、実際に持ってみると「これも作れるかも」「次はこれを作ってみよう」と用途がどんどん増えていく道具です。
そういう使い方では、管理が楽で、材料の選択肢も多く、幅広いものを造形できるFDMの使いやすさが活きます。
まとめ|細かさなら光造形、迷ったらFDM
FDMと光造形には、それぞれ得意なことがあります。
光造形は、ディテールの再現性や表面の綺麗さが大きな魅力です。
フィギュアやアクセサリーのように、細かな造形そのものが作品の価値になるものでは非常に強いです。
一方で、FDMは管理が楽で、ケースやカバー、日用品、試作品など幅広いものを作れます。
材料の選択肢も多く、造形後の追加工もしやすいため、実用品を作る自分にとってはこちらの方が使う機会が圧倒的に多くなりました。
僕自身、今3Dプリンターを一台も持っていない状態から買い直すとしてもFDMを選びます。
ただし、それはFDMの方が光造形より優れているからではありません。
自分が作りたいものにFDMの方が合っているからです。
逆にフィギュアを作ることが目的なら、僕なら光造形を選びます。
最後にもう一度まとめると、
ディテール・表面品質を最優先するなら光造形。
ケース・日用品・試作品など幅広く作りたいならFDM。
何を作りたいかまだ分からないなら、まずFDM。
この考え方で選べば、自分に合った3Dプリンターをかなり選びやすくなると思います。

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